外国人労働者新制度―「育成就労」がめざす未来
1.技能実習制度に変革
2023年10月13日 読売新聞記事より
「外国人の企業転籍制限を緩和、在留期間3年の新制度創設…「技能実習」見直し最終報告書案」によると、外国人の技能実習制度に変革が大きくもたらされるかもしれません。
政府の有識者会議が今秋に考えて最終報告書案によれば、技能実習は廃止され、
そのこの新制度は「育成就労」と呼ばれ、国内の労働力を補うため、
外国人材を確保し、一定の専門性や技能を一定まで育成することが目的とされています。
2.最終報告案の骨格
最終報告案の骨格は以下の通りとなります。
2-1.在留期間3年の新制度創設
技能実習制度は廃止となり、新たな制度は、在留期間が3年となるようです。
技能実習制度は技能実習1号(1年)+ 技能実習2号(2年)の3年。
その後、実習生の希望と受け入れ企業の要望が一致し、一定条件を満たせば技能実習3号(2年)の合計5年の滞在が可能でした。
制度の移行により5年→3年と短くなります。
2-2.日本語と技能試験を必須
新制度の3年のあと、特定技能に移行するためには、日本語と技能試験が必須となるようです。
従来の技能実習制度から特定技能に移行する場合は、2つの方法があります。
1)移行の場合に限らず、特定技能取得の要件は技能試験と日本語試験の両方に受かること
2)「技能実習」から「特定技能」への移行
・技能実習2号を良好に修了していること
・技能実習の職種・作業内容と、特定技能1号の業務に関連性が認められること
2)の「技能実習」から「特定技能」移行に関しては試験免除でしたが、新制度では試験が必須となるようです。
試験に落ちても最長1年の在留は認められるようですが、外国人にとっては厳しい制度になります。
2-3.就労1年超で転籍可能
就労が1年超で一定の日本語能力と技能があれば転籍が可能。
従来の技能実習制度は転職が原則的に認められておりませんでした。
「技能実習1号」から「技能実習2号」へ移行する場合は、転職はできませんが、
「技能実習2号」から「技能実習3号」へ移行する場合は、母国への一時帰国後、
技能実習生の希望で実習実施者を変更つまり、転職することが可能となっております。
また、実習実施者において技能実習の継続が困難になった際も、
実習生が希望すれば同一業種の他の企業に「転籍」することができます。
上記から技能実習3年間は転職できませんでしたが、新制度では1年超で日本語能力と技能をクリアできれば、転籍ができるとのこと
ここでのポイントは「転職」ではなく「転籍」。
「転職」と「転籍」の違いは以下の通り
「転籍」は出向の一形態で出向元を退職して出向先に就職することです。
「転職」は退職して別会社に就職することで退職する点では両者同じですが、
「転籍」は出向命令に基づくのに対し、
「転職」という言い方は命令ではなく自己都合というニュアンスが強いと思います。
いずれにしても退職し会社と縁が切れるわけで実質的には同じです。
ただ、「転籍」となれば、労働者の個別の同意を得ることが要件となりますので、
会社側が貴方の同意を得る手続きが必要です。
結論 外国人の自己都合での「転職」ができるわけではないということ
会社の同意を得て「転籍」してくださいと
外国人には「技能実習制度は退職できなかったけど、新制度はある程度退職できるようになったよ!安心してね!」と
受け入れ企業には、「技能実習制度は退職ができないということがメリット。
新制度は転籍できるとあるが、外国人は企業の同意がないと転職できないから安心してね」と
企業にも外国人にもきちんと理解していただく必要があります。
出入国在留管理庁 2023年10月13日 「技能実習・特定技能制度の見直し」によると
転籍の在り方に、
人材育成に由来する転籍制限は残しつつも、制度目的に人材確保を位置付けることから、
制度趣旨と外国人の保護の観点から、従来より緩和する(転籍制限の在り方は引き続き議論)
とありますので、外国人が転籍できなくて失踪するなどということがないようにしていただきたいです。
2-4.手数料は受け入れ企業が負担
外国人が来日前に送り出し機関に対して支払う手数料を受入企業が負担する仕組みを導入するとのこと
従来外国人が母国の送り出し機関に支払う手数料が高く、
借金をして日本に入国するということが問題となっております。
2022年7月26日 出入国在留管理庁発表の「技能実習生の支払い費用に関する実態調査について(結果の概要)」より
1来日前の支払い費用に関すること
来日前に母国の送り出し機関に支払う手数料のことです
国によって差がありますが、来日外国人が多いベトナムの場合を例にあげます。
ベトナムのベトナム労働・傷病兵・社会省(MOLISA)の通知によると、
技能実習生に対する手数料は、ベトナム労働・傷病兵・社会省(MOLISA)の通知により、
3年契約の場合には3,600USドル以下、1年契約の場合には1,200USドル以下と上限額が定められています。
※参考記事 在ベトナム日本国大使館 技能実習生に対する手数料の上限 より
技能実習1号+2号の3年間で考えると3,600ドル以下、1ドル149.55円(2023年10月14日現在)で計算すると538,380円。
実態調査対象の2022年当時のレートで計算すると、420,000円〜490,000円ぐらいになります。
実態のほうが高くなっていますね
話をもとに戻すと
外国人本人が送り出し機関に支払う手数料
これを受け入れ企業が負担するとなると1人あたり 500,000円ほど負担が増えることとなります。
受け入れ企業にとっては負担増になります。
では送り出し機関は受け入れ企業から費用をもらうから
外国人が負担0になるかというと・・
送り出し機関のある所在地は、日本の法律外なのでまだわかりません
極端な例だと、悪い送り出し機関が外国人から別の名目で費用を受け取る可能性もあります。
出入国在留管理庁 2023年10月11日 「技能実習・特定技能制度の見直し」によると
管理体制や支援体制の在り方に、
• 悪質な送出機関の排除等に向けた実効的な二国間取決めなどの取組を強化
とありますので、今後各国との協定そしてチェック体制などをどのようにするかが鍵になると思います。
3.まとめ
制度が変わることで良くなるような雰囲気がありますが、
現状の制度と比較対比していただき、良くなる点と悪くなる点などもあります。
この先まだまだ課題はありますので、目が話せません。
この記事の担当者:おつる
Webライター歴1年で外国人職業紹介マッチングサイト「バンベージョブ」でコラムを書いており、サイトの運営責任者も兼ねています。
ラーメン二郎が好きです。
マルエツのハンバーグが好きです。
好きな作家は山崎豊子と池井戸潤、司馬遼太郎です。
好きな漫画は「島耕作シリーズ」「黄昏流星群」