バンベージョブ

コラムColumn

HOMEコラム在留資格取消制度なんてあるの?

在留資格取消制度なんてあるの?

バンベージョブただのです。

「在留資格取消制度」をご存じでしょうか。外国人が日本に入国する際、なにかしらかの在留資格が必要となります。ですがこの在留資格、一度取得しても取り消される可能性があるのです。今回は、どのような場合に取消しをされてしまうのか、取消しをされたらどうなるのかといったことについてまとめていきます。




一度は正式に在留資格が認められたとしても、偽るなどして嘘をつき、不正な手段で上陸許可の証印を受けていた場合や、在留資格に基づく本来の活動を一定期間行わないで在留していた場合などに、外国人の在留資格を取り消すことを在留資格取消制度といいます。在留資格が取り消されてしまうと外国人は日本に滞在し続けることが出来なくなります。


かつては在留資格に応じた活動を3ヶ月以上行っていない場合にだけ、在留資格の取消しが行われていましたが、平成28年の法改正により在留資格に応じた活動をしておらず、かつ在留資格外の活動を行っている(または行おうとしている)場合、3ヶ月未満であっても取り消すことが可能になりました。


企業側としては、雇用している外国人労働者の在留資格が取り消されてしまうと、労働力を突然失うことになってしまいます。出国までの猶予があったとしても、その期間内に新たに労働者を雇用できるとも限りません。

在留資格の取消しは外国人だけでなく、雇用主にとっても大きな影響になり得るので、決して他人事とはいえないのです。




在留資格の取消しがされてしまう場合は、出入国在留管理庁によって下記のように定められています。


①虚偽申請などの不正により日本上陸許可証印を受けた場合

②許可されていない活動をした場合

③日本人配偶者や永住配偶者の条件で在留資格を取得していながら、配偶者としての立場を6ヶ月以上継続して言いない場合

④中長期在留の許可を受けて90日以内に出入国管理庁長官へ住居地の届出をしない場合

⑤中長期在留者が出入国管理庁長官へ届け出た住居地から退去した90日以内に新しい住居地の届出をしない場合

⑥中長期在留者が、出入国管理庁長官へ虚偽の住居地を届け出た場合


簡単にまとめると、嘘や不正をする・約束と違う活動・中長期在留者が自身の居住地申請をしっかりと行わないといった場合が主な在留資格取消の原因になっています。


より詳しいことは出入国管理庁HPに記載があります。

在留資格の取消し(入管法第22条の4) | 出入国在留管理庁 (moj.go.jp)




出入国管理庁のデータを元にグラフ化してみました。令和4年に出入国管理および難民認定法第22条の4第1項に基づく在留資格の取消しを行った件数は1,125件で、前年に比べ325件(40.6%)増加している結果になりました。



まず在留資格別に分類すると、「技能実習」が901件(80.1%)「留学」が163件(14.5%)「技術・人文知識・国際業務」が23件(2%)です。



次に国籍・地域別に分類すると、「ベトナム」が804件(71.5%)「中国」146件(13%)「カンボジア」53件(4.7%)という結果になっています。


取消し件数は年々増加傾向にあり、今後も厳しく対処されていくことが予想されます。


参考:令和4年の「在留資格取消件数」について | 出入国在留管理庁 (moj.go.jp)




在留資格取消しにより外国人は日本に在留することができなくなるため、国へ帰らなければなりません。30日を限度とする出国に必要な期間が設定され、その期間内に自主的に出国をしていただきます。この期間内に出国しても、通常在留期間内の出国と変わらず、特に罰則等は発生しません。


しかし、この指定された期間内に出国しなかった場合は退去強制(強制送還)の対象となり、罰則が発生します。(3年以下の懲役もしくは禁錮もしくは300万円以下の罰金、またはその懲役もしくは禁錮及び罰金を併科)




いわゆる強制送還と言われる退去強制は、日本の安全を守るため不法入国した外国人を国外へ出国させるための制度です。


犯罪行為やオーバーステイなどで摘発された外国人は退去強制処分となります。送還先は、その者の国籍または市民権の属する国が原則になります。何らかの事情で速やかに送還することが出来ない場合は、送還できるまでの間「入国者収容所」などに収容されます。


強制送還をされると、上陸拒否期間と言って一定期間日本に入国することができなくなります。退去強制の日から5年間(2回目以降は10年間)日本への入国が出来ません。




出国命令も強制送還の内のひとつですが、「収容所などに収容されない」「上陸拒否期間が短い」「出国準備期間が与えられる」など、退去強制と比べて処置がゆるやかになります。


対象となるのは不法在留の場合で、具体的には摘発前に自ら出頭する、懲役刑を受けていない、強制送還や出国命令を受けたことがない、などいくつかの条件をクリアした場合に適用がされます。


出国命令により出国した者は、出国した日から1年間日本への入国が出来ません。




在留資格取消の検討を出入国在留管理庁がする場合、対象になる外国人の意見聴取が実施されます。入国審査官は、意見聴取通知書を当該外国人宛に送付します。外国人は意見の聴取日に出頭し、意見を述べたり証拠を提示することができますが、日本語を流暢に話せない場合は正当な理由を説明できない可能性もあります。その場合は弁護士や専門家を雇い、同行してもらうことが対処法になるでしょう。


ただし法務大臣は、当該外国人が正当な理由なく意見聴取に応じない場合には、意見の聴取をせず在留資格の取消しをすることが可能です。


もしも意見聴取通知書が届いた場合、まずは外国人の話をよく聞いてあげてください。正当な理由があったり、誤解されている可能性もあります。実際に、外国人が不正や虚偽をしていないことが条件ではありますが、必要な資料や在留資格を有するに足る証拠を出すことが出来れば疑惑も晴れます。




外国人本人はもちろんのこと、在留資格の取消しがあるということは雇用側にとっても重大なことです。外国人労働者を雇っている場合、在留資格の取消しは十分注意する必要があります。


在留資格取消し制度は、法律を守らない外国人を日本から出国させるために必要な制度ではありますが、外国人が無実である場合は擁護することも雇用側の役割のひとつです。万が一に備え、在留資格が取り消される条件について留意しておきましょう。




この記事の担当者:ただの


外国人職業紹介業務と登録支援機関業務を行っています。人事の経験から採用する側の立場や注意点などお伝えできればと思っています。犬が大好きで小型犬を飼っています。好きな映画監督はクリストファー・ノーラン、ジョーダン・ピール、アリ・アスター。好きな制作会社はA24。

pagetop