「技術・人文知識・国際業務」での就労
目次
1.在留資格「技術・人文知識・国際業務」とは?
バンベージョブのおつるです
在留資格「技術・人文知識・国際業務」(略して「技人国」)とは、日本で働く外国人に対して与えられる在留資格の一つで、技術、人文知識、国際業務に関する専門的な知識やスキルを持つ外国人が、日本国内での就労や業務活動を行うために必要な資格です。
具体的には、技術分野では、製造、建設、IT、電子機器、ロボット、バイオテクノロジー、自動車航空、宇宙などの分野において、高度な技能を持った外国人が該当します。
人文知識分野では、言語教育、文化交流、芸術、哲学、歴史、社会科学、法律、宗教などの分野で、高度な専門知識を持った外国人が該当します。
国際業務分野では、国際ビジネス、外交、国際経済、貿易、国際法、国際協力、研究開発などの分野で、グローバルな視点と高度な専門的な知識を持った外国人が該当します。
この在留資格を持っている人は、日本国内での就労や業務活動をすることができますが、在留期間や許可された外国人活動範囲には制限があります。また、更新時には雇用主や所属する団体などの支援が必要となります。
1.1 就労可能な職種は?
「技人国」はオフィスワークで働く外国人をイメージしてもらえれば良いと思います。
この資格を持つ外国人はすでに30万人以上にのぼっています。
「技人国」は業種に縛られなく、職種が重要となります。
主に大学等で学んだ体系的な学術知識、高度な専門性や国際知識を要する業務で就労が可能となりまして、現場での単純労働は不可となります。
代表的なのは以下の通りとなります。
技術分野:
エンジニア
研究者
技術士
ITコンサルタント
経営コンサルタント
建築士
土木技術者
電気者技術
機械技術者
自動車技術者
医療機器技術者
バイオテクノロジーの研究者や技術者
ロボット技術者
航空宇宙技術者
人文知識分野:
語学教師
外国語翻訳者
文化交流コーディネーター
美術館、博物館の学芸員
学者の歴史
社会科学者
法律家
宗教家
心理カウンセラー
国際業務分野:
グローバルビジネスマネージャー
マーケティング・セールス担当者
海外営業担当者
貿易・輸出入担当者
国際法家
外交官
国際機関の職員
研究者
ボランティア、国際協力者
1.2 取得するための条件は?
【学歴・経験の要件】
・大学・短大(国内、海外の大学を問わない)卒業程度の学歴がある
・専門学校卒でもOK(専門学校は日本国内の学校にかぎる。日本語学校は対象外)
・10年以上の実務経験(在学期間も含む)があれば許可されることもある
【仕事・業務の要件】
・学術的知識を活かす仕事
・語学力を活かす仕事
・外国人だからこそわかる海外の文化や考え方を活かす仕事
※学術的知識を必要としない、繰り返し行うことで身に付く仕事・業務(いわゆる単純労働)は不可です。
【報酬の要件】
日本人が従事した場合と同等以上を支払うこと
1.3 雇用形態
上記要件を満たせば基本的には雇用形態は問われません
正社員、契約社員、アルバイト、派遣社員でも活躍は可能です。
ただアルバイトや派遣社員の場合、許可もらえる在留期間が短くなりがちです。
1.4 現場での就労NGなの?
「技人国」は職務内容の要件がありますので、学術的知識を必要としない現場労働、単純労働で就労することは不可能です。
誰でもできる仕事ではなく、専門知識や素養を必要とする仕事に従事する必要があります。
「専門的知識や素養を必要とする仕事」にも現場での実務経験がないと就けない専門職種も多いです。
では現場での実務経験はNGかというと、そういくことではなく
実際に出入国在留管理庁(以下「入管」)でも認めています
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で許容される実務研修について
https://www.moj.go.jp/isa/content/001343659.pdf
※以下 文章転用
1 実務研修の取扱
外国人が「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で在留するためには,当該在留資格に該当する活動,すなわち,学術上の素養を背景とする一定水準以上の業務に従事することが必要です。
他方で,企業においては,採用当初等に一定の実務研修期間が設けられていることがあるところ,当該実務研修期間に行う活動のみを捉えれば「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に該当しない活動(例えば,飲食店での接客や小売店の店頭における販売業務,工場のライン業務等)であっても,それが日本人の大卒社員等に対しても同様に行われる実務研修の一環であって,在留期間中の活動を全体として捉えて,在留期間の大半を占めるようなものではないようなときは,その相当性を判断した上で当該活動を「技術・人文知識・国際業務」の在留資格内で認めています。
→ 「技人国」の在留資格に該当する活動を行うために必要とされる実務研修を認める記載になります。
2 「在留期間中」の考え方
この研修期間を含めた在留資格該当性の判断は,「在留期間中の活動を全体として捉えて判断する」ところ,ここでいう「在留期間中」とは,一回の許可毎に決定される「在留期間」を意味するものではなく,雇用契約書や研修計画に係る企業側の説明資料等の記載から,申請人が今後本邦で活動することが想定される
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格をもって在留する期間全体を意味します。
そのため,例えば,今後相当期間本邦において「技術・人文知識・国際業務」
に該当する活動に従事することが予定されている方(雇用期間の定めなく常勤の職員として雇用された方など)が,在留期間「1年」を決定された場合,決定された1年間全て実務研修に従事することも想定されます。
他方で,雇用契約期間が3年間のみで,契約更新も予定されていないような場合,
採用から2年間実務研修を行う,といったような申請は認められないこととなります。
なお,採用から1年間を超えて実務研修に従事するような申請については,下記3に記載する研修計画の提出を求め,実務研修期間の合理性を審査します。
→ 在留期間の考え方は、在留カードの期間ではなく、雇用契約期間になります。
3 研修計画等
研修期間として部分的に捉えれば「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に
該当しない活動を行う必要がある場合,必要に応じ,受入れ機関に対し日本人社員を含めた入社後のキャリアステップ及び各段階における具体的職務内容を示す資料の提出をお願いすることがあります。
当該実務研修に従事することについての相当性を判断するに当たっては,当該実務研修が外国人社員だけに設定されている場合や,日本人社員との差異が設けられているようなものは,合理的な理由(日本語研修を目的としたようなもの等)がある場合を除き,当該実務研修に従事することについての相当性があるとは認められません。
なお,採用当初に行われる実務研修の他,キャリアステップの一環として,契約期間の途中で実施されるような実務研修についても,同様に取り扱っています。
→ 日本人外国人問わないキャリアステップ資料の提出が必要となります。
4 在留期間の決定について
これら実務研修期間が設けられている場合,実務研修を修了した後,
「技術・人文知識・国際業務」に該当する活動に移行していることを確認する必要があるため,在留資格決定時等には,原則として在留期間「1年」を決定することとなります。
なお,在留期間更新時に当初の予定を超えて実務研修に従事する場合,その事情を説明していただくことになりますが,合理的な理由がない場合,在留期間の更新が認められないこととなります。
→ 実務研修を行う場合は、「1年」の許可となります。当初の予定を超えた場合きちんとした理由が必要となります。
以上のことから現場での就労(実務研修)を認められておりますが、現場作業のみでの就労はNGになります。
実務経験を行うためには、きちんとしたキャリアアップ計画を立てることが重要となります。
1.5 あいまい
前項では実務研修での現場作業について説明させていただきましたが、
様々な業務の中でどこからが現場作業にあたるのか?
中々判断が難しい場合もあります
結局許可・不許可の判断するのは「入管」になります。
「技人国」は他の在留資格と違って具体的な業種や職務内容が決まっているわけではありません。
あいまいなところがあります。
「入管」での許可の事例は日々変わっていきます。
過去の許可事例などが積み重なっていき、新たな申請も許可・不許可判断されます。
法律でいうところの、過去の同種の裁判の先例に拘束される判例法主義に似てます。
1.6 「就労資格証明書」の取得
海外からの入国の場合、入国前に「在留資格認定証明書交付申請」がありますので、許可・不許可がはっきりしますが、日本国内で就労済みの「技人国」の外国人は、既に「技人国」の在留カードを持っています。
所属機関の届出を行うだけで、転職が可能となります。
転職後の仕事内容が転職前と同じであれば、原則在留カードの変更は不要と考えられております。
ただし、例を挙げますと、A社で通訳として働くことが認定されたとしても、別の会社で通訳で働くことは認められているということではありません。
在留資格の認定は、本人だけではなく、会社の規模や安定性なども判定の要件となります。
上記のように仮に転職して1年後、既存の在留カードの更新期限がやってきます。
その際に「在留資格更新許可申請」を行いますが、そこで「在留資格更新の不許可」が出てしまったら、最悪日本に在留することができなくなってしまいます。
これは雇用した企業にとっても、外国人にとっても大きなデメリットになります。
こういったリスクを減らすために、「入管」に事前確認をとる制度があります。
「就労資格証明書」と言いまして、証明書の申請は強制ではなく任意となります。
「就労資格証明書」は就労の在留資格を持つ外国人が転職などで勤務先が変わった場合に、新しい勤務先での就労内容(活動内容・従事業務)が、現在の在留資格の活動に含まれていることを確認する目的で事前に申請し、「入管」から交付される証明書となります。
メリット
1)在留資格更新時の不許可を防ぐ
→ 事前に外国人自身が転職先の業務で就労できるか?確認ができます
2)不法就労者雇用の防止
→ 雇用する外国人が不法就労者ではないことを確認することもできます
※ただ就労資格証明書を提示しないことによって雇用の差別等の不利益な扱いはNGです
3)更新手続きの手間を減らせる
→ 就労資格証明書を取得している場合の更新手続きはスムーズに行われます
結果
「技人国」での転職の場合は「就労資格証明書」を取得しましょう
2.建設業での就労について
「技人国」要件を満たしている場合、建設業で「技人国」の在留資格を取得することができます。
ただし、建設業の現場作業は、単純労働とみなされるため、この在留資格で就労することはできません。
建設業で「技人国」の在留資格を取得できる職種としては、以下のようなものがあります。
施工管理者
建築設計者
土木設計者
建築設備設計者
建設コンサルタント
建設マネージャー
建設工事請負業者
建設資材メーカー
建設機械メーカー
建設用ソフトウェアメーカー
建設用資材商社
上記に挙げた職種は、いずれも高度な専門的知識や技術を必要とするため、「技人国」の在留資格で就労することができます。
ただし、建設業の現場作業は単純労働とみなされるため、この在留資格で就労することはできないのでご注意ください。
2.1 建設現場への入場と作業について
建設現場は危険なことがあります。 安心して働くためには安全に配慮する必要があります。 よって外国人が建設現場に入場するためには、いくつかの条件があります。
- 適正な技能講習を修了していること。
- 健康診断に合格していること。
- 建設現場で安全に作業できる日本語能力があること。
上記の条件を満たしている場合、建設現場に入場することができます。 ただし、建設業の現場作業は危険を伴うため、外国人労働者の受け入れには、 十分な安全対策を講じることが重要です。
受け入れ側は具体的に、以下の安全対策を講じることが必要となります。
- 建設現場の安全管理体制を整備する。
- 外国人労働者に対して、安全衛生教育を行う。
- 外国人労働者の健康管理を行う。
- 外国人労働者の労働環境を改善する。
安全対策を講じることで、外国人労働者の安全を確保し、円滑な建設現場運営につなげることができます。 働く環境が建設現場作業がメインになるのであれば、「技人国」ではなく「特定技能」の在留資格に切り替えることをおすすめします。
2.2 外国人建設就労者等建設現場入場届出書
「技人国」の外国人が、上記のように設計業務や施工管理者などでの就労をされる事例も増えています。
設計業務や施工管理者などでも建設現場を知らないといけません。
建設現場によっては、元請事業者から「外国人建設就労者等建設現場入場届出書」の記入提出を求められることがあります。
外国人が建設現場に入場するために必要な書式と捉えられていますが、厳密には
主に「特定技能」外国人向けの書式となっています。
こちらの書式について「技人国」の外国人は提出の義務はありません
詳細は下記 国交省通達をご参照お願いします
【お知らせ【特定技能制度(建設分野)】
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/tochi_fudousan_kensetsugyo_tk3_000001_00002.html
〇【特に元請の皆様へ】現場入場届の添付書類について
元請の皆様には「特定技能制度及び建設就労者受入事業に関する下請指導ガイドライン」の遵守をお願いしておりますが、このガイドライン及びこれに基づく「外国人建設就労者等建設現場入場届出書」の対象者は、在留資格が「特定技能」又は「特定活動(告示32号、外国人建設就労者)」のみとなっていますので、本ガイドラインの対象外である他の在留資格(例:「特定活動(帰国困難)」、「技能実習」、「永住者」、「日本人配偶者等」、「技術・人文知識・国際」)や資格外活動の方に対し、特定技能外国人を対象とした「建設特定技能受入計画認定証」や外国人建設就労者を対象とした「適正監理計画認定証」の提出を求めないよう、くれぐれもご注意ください。
なお、外国人建設就労者受入事業は令和3年3月31日をもって新たな計画の認定を終了しています。
上記により提出の義務はございません
ただ 元請企業によっては建設現場への入場を規制している場合があります。
そうなりますとせっかく雇用した外国人の就労に影響が出ます。
よって外国人雇用前に必ず元請事業者さんに外国人の入退場についてご確認いただくことををおすすめします。
3.まとめ
「技人国」での就労は必ず許可が出るとは限りません。
判断するのは「入管」になります。
外国人は自身の在留資格で就労ができるか?非常に心配します。
万が一不許可になってしまった場合、在留期限も迫っておりますので、再申請を行うか?別の企業に転職するのか、切実な問題となります。
最悪ケースとしては帰国せざるを得ず、外国人にとっては人生を左右する一大事となります。
受入企業も紹介会社も基本的な知識を持ち、軽はずみな判断をしないように心がけると日本で就労したいという外国人も増えると思います。
この記事の担当者:おつる
Webライター歴1年で外国人職業紹介マッチングサイト「バンベージョブ」でコラムを書いており、サイトの運営責任者も兼ねています。
ラーメン二郎が好きです。
マルエツのハンバーグが好きです。
好きな作家は山崎豊子と池井戸潤、司馬遼太郎です。
好きな漫画は「島耕作シリーズ」「黄昏流星群」